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特集(2)わがまちの輝き見つけ隊 vol.25
 わがまちの輝き見つけ隊は、夏休みにかけて梅田スカイビルで開催されている、造形作家南條亮さんによる「人間、この愚かですばらしきもの展」を訪ねました。
 南條さんのアトリエは安治川にあるということで、阪神なんば線でつながるエリアで活躍される匠の取材を兼ねて展示会場を訪ねたものです。
 今回は、南條さんと取材メンバーの会話形式で作品展の魅力をお伝えしたいと思います。
   
はじまりは大阪から…「人間、この愚かですばらしきもの展」(その2)

◇ひとつの作品展がつなぐもの


隊員  今回取材に訪れた日がたまたま盆休みということもあり、親子3世代で会場を巡り、小さな孫と一緒に可動展示のボタンを操作したりと、ほほえましい様子を各所で見ることができました。ジオラマ・ワークショップでも、大人も子供も一緒になって製作に熱中されている姿が印象的でした。
南條    今回初の試みですが、ものづくりの楽しさを世代を超えて分かち合ってもらいたかったのです。今後の作品展を見て、「自分のつくった人形だ!」と楽しんでもらえたらなお良しですね。
 私の作品展では、孫や子供を連れてくる方が多く、とりわけお婆ちゃん方が展示を前にして雄弁に昔のくらしぶりを語っておられます。もちろん日常から語っておられるようですが、その時代の実体験のない子供達にとっては話を聞くだけでは理解できないのでしょう、展示を見て「やっと婆ちゃんの話していたことがわかったわ!」と言ってくれるのがうれしいですね。
隊員    現在の所、大正時代の作品が未完成なので、今後の作品展がもっと楽しみになりました。
南條    大正時代の大阪は、モダン大阪の娯楽場:ルナパークと初代通天閣の姿で表現する計画です。古い写真等をもとに建物の図面を起こし、模型を製作します。同時にそのシーンに収まる人物もつくっていきます。今回のワークショップでは、その製作現場も公開しています。
隊員    明治・大正・昭和の終戦期とくれば、次は高度経済成長期が再現されるのか?と思うのですが、ここまでくれば私達も実体験のある時代なので、ぜひつくっていただきたいと思います。私も自分の子供に語れるものが欲しいな、と感じましたよ。
南條    例えば、どんなシーンが高度経済成長期を象徴すると思いますか?
    ・・・隊員は考え込んでしまう。大阪都心の高度経済成長期を代表するシーンといえば、駅前百貨店と大きな商店街、映画館か?とも思いつつ、すぐには答えられなかった・・・
     実は今回の作品展にはひとつの大きな物語があるのです。もとになる主人公は、日露戦争以後に大阪に生まれた子供で、明治・大正期を過ごし、成人してからは学校の先生になっている。そこに昭和の大阪大空襲があって、親を亡くした孤児に出会う。先生は孤児の支えとなって生きていく。
 そこからは主人公がこの孤児に移り、野坂昭如作品「火垂るの墓」のように戦後の荒廃の中を逞しく生き抜いていく。やがて時は移り、高度経済成長期の少し手前で彼は立ち止まり、「行くか、戻るか…」と思案しているシーンで時代表現は止めてある。その先にあるのは様々な物質に満たされた輝かしい未来か、それとも…
 会場の展示構成は終戦直後からはじまり、孤児の少年を主人公とした戦後復興のドラマに移行し、やがて高度経済成長の手前に至る。そこで迷った少年が、かつて自分を支えてくれた恩師に尋ねる。恩師は、自分の生きてきた歴史を振り返ってみせる…というように順番を入れ替えて演出してみました。
 また会場の一番最後に見ていただく影絵は、私の子供時代の思い出を表現しています。
隊員    無名の庶民の生き様が、3つの時代の器の中でつながりあい、行き来するような物語構成なのですね。ところで、これまでの来場客の反応はいかがですか?

◇足元の歴史を知らない不安や焦燥の果てにあるもの
 

南條  意外にも若い方がよく見に来てくれるので、私自身驚いています。前に、いかにも「イマドキの若者」風のカップルが来られて、互いに「来て良かった!」と言っているのを聞いて、「この作品展目的に来てくれたんだ…」とうれしくなりました。後で彼らが記入してくれたアンケートを見ると、「いまの日本は変わり果てた姿だ」というようなことが書いてあり、若者もそう感じていることに驚かされました。先日も一人で来た若者が、私をキッと睨み付けながら、「リアルすぎるやんか!」と言うわけです。彼が書いたらしいアンケートを見ると、檄文調で「世の中の間違っている奴らを、この会場に引きずってきてでも見せるべきだ!」と力強く書かれてあった。
 若者世代もいまを受け入れているわけではないんだ、ということを知りました。
 私達にとって20世紀という100年間は一番身近な歴史なのに、そんな自分の足元のことをよく知らないままでくらしていくことは、不安なことです。最後の展示は影絵の世界でしたが、自らの足元にある歴史も、いわば自分にとっては影のような存在なのです。
隊員    自分がここに存在する意味を知る、来歴のようなものでしょうか。
南條    いまの世の中には、そんな影を持たない世代が生きているというか、自分に影があることにも気づかない世代がね。身近な大人の生き方や価値観を継承していくということは、とても大事なことなのです。
 私達が子供の頃は様々な年齢が集まって遊んでいましたから、子供の世界の中にも先輩後輩関係があって、自然と年上を敬い、また年下を庇う意識が身に付いてきた。現代の子供は異年齢とつきあうどころか、家庭でも個室に籠もってしまう。だから同じ価値観同士だけでつながることの危うさに気が付かないわけです。
 でも、会場を訪れた若者の反応を見ていると、「まだ捨てたものじゃない」と、ある種の救いを感じることもあります。
隊員    ノスタルジーだけでなく、多様な世代にものを想わせる展示の力を感じますね。子供が見ても感じるものがあるはずですね。
南條    ある小学校の先生が、「児童に見せたいので、展示内容をビデオに撮りたい」とおっしゃったので快諾すると、後日ビデオをもとに授業を行い、ちゃんといのちの尊さを教えておられました。教育現場の荒廃も社会問題になっていますが、こういう熱意と行動力のある先生もいらっしゃるところに希望を感じます。
 バブル以降は世の中自体が金儲け競争に走ってしまっているようですが、欲や経済の物差しのみで測るだけなのか?という疑問を感じることも大事です。
 私には、いまの世の中には戦争以上の悪があるように思えてなりません。戦争の発端には国同士の利害の衝突があり、相対するものが明確であることが多い。ということは、いずれは終わりが来るものでもある。しかし、地球環境問題などは、どこに敵がいて、何に端を発しているのかが見えづらく、自身も困りながらあちこちいじくり回しているうちにどんどん悲惨な状況になっているようで、主体も終わりもない。
 そのような状態を見るにつけ、人間とは性懲りのない生き物だと感じます。歴史という気の遠くなるような時間を費やしてきたにもかかわらず、「いのち」とは何かという単純な問いにさえ、いまだ答えを見出せないでいるわけでしょう。

◇地域密着型ミュージアム構想の実現に向けて…


隊員  そういう意味でも、常設展示など作品がもっと多くの人の目にふれる機会があればよいですね。今回の作品展もご自身で主催運営されたと聞いていますが、かなりのご苦労があったのでしょうね。
南條    ジオラマ製作には気の遠くなるような時間と根気、資金が必要で、多くの仲間の手を借りながら今日に至っているわけですが、本当に厳しいものがあります。
 叶うことなら、常設展示できる場や諸々の支援協力があれば、多様な世代が交流できるミュージアムをつくりたいと思っています。
 単なる展示だけでなく、ジオラマ製作の現場もあって、誰でも参加することができて、一緒に作品を作り続けていくようなね。与えられたものを見るだけではなく、自分の体験や知識、思いを語り合い、それを作品作りに反映させることの出来る場所にしたいのです。
隊員    終わりのない、生きたミュージアムというか、一種の学校のような役割のある場ですね。
南條    空間にとらわれず、活動が周辺に拡がっていくような、地域密着型の場をつくりたいのです。近所に懐かしの駄菓子屋ができたり、と様々なつながりを生むようなものでありたい。
隊員    作品展がない時期には、作品は安治川のアトリエで保管されているのですか?
南條    かなり手狭になってきましたし、本音は保管より常に人に見てもらいたいのです。もともと江戸堀のとあるビルの屋上でブルーシートを張って製作していたのですが、見かねた大家さんが屋根をつけてくれた。そこから数年後に杭全町に場所を移し、安治川に移って30年になります。
 できれば身近な人々のくらしに密着した場所で常設展示の場を見つけられたら…と思っています。
 20世紀のモニュメントは決して大きなビルや商業施設、娯楽施設だけではないはずです。自分たちの残してきた足跡から、何も未来の指針を学ぶ事が出来ないものは、本当の文化だろうか、かつての大阪は町人が文化の中心であったことを想うと、現在の姿はあまりにも寂しすぎますよね。
隊員    一人一人の想いがつながって素敵な場所ができ、さらに温かなまちづくりに拡がっていくように、応援しています!
   
<トクトク情報>

都市の中に日本の原風景が出現した?!
 今回の作品展会場が位置する新梅田シティ(大阪市北区大淀中1)は、21世紀を見据えた未来型都市として計画され、空中庭園で連結する超高層ビル「梅田スカイビル」に代表されるように、先進技術と環境デザインの粋が結集されたまちとして知られています。その一方で、敷地内の広場に接する「新・里山」(約8,000u)は、地元小学生が総合学習授業の一環として農業を体験できるスペースとしても開放され、新梅田シティで働く人々や家族で構成したボランティア組織「新梅田シティ里山くらぶ」の農業体験や里山の保全活動、積水ハウス従業員が講師役を務める教育支援活動が展開されています。
 新梅田シティでは、夏場は様々な虫の音に耳を傾けながら、稲の葉が風にそよぐ風景を眺めて和むことができるだけでなく、庭園にはホタルが放虫され、独特の夜景を楽しむこともできることでしょう。
 都心にこんなほっとする風景があるのをご存じでしたか?

 ○ 梅田経済新聞関連記事
http://umeda.keizai.biz/headline/261/

   

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