
近鉄沿線では、新年から3月にかけて酒蔵の新酒が登場する時期限定で実施されている「酒蔵みてある記」が開催されていますが、3月10日のイベントが今年の最終回となってしまいました。
今回参加したのは、近鉄尺土駅から長尾神社・当麻寺・石光寺を巡って、地元の酒蔵大倉本家を訪ねるという徒歩約8キロのコースでした。

午前10時集合場所の尺土池ふれあい公園で受付を済ませ、近鉄の線路沿いを歩くところから散策ツアーがスタートしました。散策ルートとなった小道には、春らしくたんぽぽやスミレ、つくし等が顔をのぞかせており、道ばたの野草を摘みながらにぎやかにおしゃべりに花を咲かせる一団もあり、全体的にゆったりとしたペースで730人弱の人々が進んでいきました。
まずは飛鳥と難波の地を結ぶ日本最古の官道と言われる竹内街道をはじめとした歴史的に主要な街道筋が交差する交通の要衝に位置する「長尾の森・長尾神社」へ。
この神社は大蛇や竜の尻尾にあたり、その頭の部分は醸造の神としても名高い三輪明神にあるという伝説もあります。そのような伝説と関係があるのか、鳥居の手前にある石塔の足元には、愛らしいカエルの石像も配されていました。神社の中には、絵馬堂などもあり、毎年10月4日にはその年に新たに氏子に加わった赤子の成長を祈願した絵馬が奉納されているとのことで、地域と強い絆が築かれた神社であることがうかがわれました。
長尾神社を出てしばらく歩くと、正面には大津皇子や万葉和歌でも知られる「二上山」が姿を現します。大阪府と奈良県を隔てる金剛山地の北端で、雄岳・雌岳の二つの頭をもたげたこの山は、悲劇の皇子とされる大津皇子の墓があり、「うつそみの人なるわれや明日よりは二上山をいろせとわが見む」とその死を悲しんで詠まれた姉君の大来皇女の和歌が思い出されます。
そのまま当麻の旧市街地に入ると、街道の面影を色濃く残す道標や庚申塚、美しく手入れされた町家などが散策の楽しみを添えてくれます。ひときわ人々の興味をひいていたのが、「相撲館けはや座」でした。
平成 2年 5月の開館であるこの施設の手前には、相撲の開祖と言われる当麻蹶速(たいまけはや)※の塚があり、「日本相撲発祥の地」を記念してできたものです。一番の見所は、本式(本場所と同じ仕様)の土俵です。桟敷席もあり、子ども相撲が行われたりするそうです。隣には観光案内所も完備されています。
※日本書紀では、当麻蹶速と野見宿禰(のみのすくね)が戦い、これが日本相撲の発祥となったとされている。後に野見宿禰は相撲の神とされ、同じく当麻蹶速も相撲の開祖として讃えられた。
「けはや座」を出ると、すぐ「当麻寺」の参道が続き、昔ながらの町家で名物中将餅やそばを商う店が軒を連ね、道草の楽しみが増えます。
「当麻寺」は、白鳳時代創建の古刹であり、役行者(えんのぎょうじゃ)が開山したことや、中将姫ゆかりの寺として知られています。また「牡丹寺」として名高く、「関西花の寺25ヶ所霊場会」の1名所となっている寺です。残念ながら牡丹の季節はまだ先のことですが、見事なしだれ梅や桃の花が咲き誇り、時間の余裕があれば、寺の各坊で供されている茶会や茶がゆ定食なども味わってみたいところでした。また西南院庭園には水琴窟もあり、半日からまる1日心安らかな時間を過ごすこともできる名所です。
「当麻寺」の周辺には、歴史的な建物や庭園を活かした魅力的なお店がたくさん並んでいます。日本庭園を眺めながら漬け物やすきやきを味わうことのできるお店、アートギャラリー、文具の専門店などなど目移りする場所が多く、後ろ髪引かれる思いをしながら、次のルートである「石光寺」をめざしました。
「石光寺」は、天智天皇の時代にこの地に光を放つ三つの石があり、弥勒三尊の石仏が現れたことから、天皇の勅願によって堂を建立し、「石光寺」の名を賜って役行者が開山したのが始まりとされているものです。境内には中将姫ゆかりの「染の井」や「糸掛け桜」があり、菖蒲や牡丹の名所でもあります。
これらの名所を巡り、最後に大倉本家の蔵を見学し、蔵の方々が用意してくださった粕汁を味わって、今回の散策のシメとなりました。
大倉本家は、山卸廃止もと(やまおろしはいしもと)で醸造する「山廃仕込み」※の酒づくりをモットーとしています。大倉本家が誇る銘酒「金鼓」は、全国新酒鑑評会において、過去何度も金賞に輝くなどの実績を誇り、地元では特別な日に飲む酒として名高いものでありましたが、種々の事情により1990年代の末には酒造りを中止していたのだそうです。それが、2003年に息子さんが蔵に戻り、かつての製法で見事に「金鼓」復活を果たされたという味わい深い物語を聞かせていただくことができました。
※山卸廃止もとで造った酒は、濃醇で味の腰も強く、奥行きのある香りが楽しめる反面、途中で腐敗するリスクも高く、造り手である杜氏の長年の経験と高度なセンスや手間を要し、敬遠される傾向があると言われています。

このように「酒蔵みてある記」最終回は、盛りだくさんな見所に目移り心奪われながら、辿り着いた蔵で銘酒にまつわる様々な物語にもふれることができ、有意義な1日を過ごすことができました。来年の企画が非常に楽しみでもあります。
「関西花の寺25カ所霊場会」で名花を愛でる
『関西花の寺25ヵ所霊場』は、宗旨宗派の垣根を越えて関西一円2府4県から集まった、花がご縁のお寺を紹介するものです。霊場会では、巡拝者の心身の成長を願い、成満の度に記念品を授かることもできるとか。10名以上のグループで予約すると、それぞれのお寺で花説法を聴くこともできるという特典があります。
http://hana25.web.infoseek.co.jp/
二日酔いによし「陀羅尼助丸(だらにすけがん)」
当麻寺中の坊では、大峰山ゆかりの和漢胃腸薬「陀羅尼助丸」が販売されています。これはオウバク、ガジュツ、ゲンノショウコといった古来の薬草を用いてつくられた黒い胃腸薬で、二日酔いや胃腸の虚弱時によく効くと伝えられているものです。大和で酒やグルメを楽しむついでに買い求められてはいかが?
当麻の里観光ボランティアガイド
当麻の里葛城市では、5日前までに申し込むと、観光ボランティアガイドの会の皆さんによる無料ガイドサービスを受けることができます。お問い合わせは、tel0745-48-4611(火、水を除く)まで。
酒蔵で世界でたったひとつの
アクセサリーづくり教室にチャレンジ
明治元年に建築された酒蔵を改装した空間として知られる「文晃堂当麻本店」では、アートギャラリーやカフェ、文具ショップ等が営業されています。毎月第2水曜日の午前中は、銀粘土でつくるシルバーアクセサリー教室も開催中です。 http://www17.ocn.ne.jp/~bunkodo/index.htm
4年に1度だけしか見ることのできない天井画
当麻寺には、「昭和の絵天井」で有名な客殿「松室院」があります。ここは文化勲章の日本画家前田青邨はじめ昭和を代表する画家の手による天井画や浄土大曼荼羅が保管されており、4年に1度だけ公開されることでも知られています。
そこでお得な情報ですが、中の坊で写経を申し出ると、この天井画や曼荼羅を見せていただくことができるのだそうです。
美しいものを見て目の供養を行った後は、地元の酒蔵で旨い酒を味わうのもお忘れなく! |
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