
前回は、近鉄沿線の恒例イベント「酒蔵みてある記」奈良天理編をご紹介しましたが、今回は同じく奈良で開催された「高山竹林園・中本酒造」のコースをご紹介しましょう。

学研奈良登美ヶ丘駅からスタートする今回の散策コースは、全行程約14キロに及ぶもので、他のコースと比べてもかなり距離があるうえに、配布されたマップで見るだけでも急な上りや下りのある、いわゆる「健脚向けコース」であると思われました。 さすがに参加者の姿を見渡すと、筋金入りの「登山ファッション」の方からジャージ姿の方ばかりで、単なるハイキングに行くのではない!という気合いがびしびしと伝わってきました。
午前10時に、まだ開通して間もない「けいはんな線」のモダンな駅前から受付を済ませて順次スタートし、閑静な戸建住宅街の坂道を列をなして上ること数分、久しぶりに冷え込んだ日でありながら、汗ばむくらいの状態になってきました。
こうなると、最初は仲間同士で和やかな会話を交わしながら歩いていた人々も急に言葉少なになり、まさにマラソンのような意気込みを感じつつ、ひたすら前をめざして進んでいくのでした。
やがて住宅街を抜け、急な上り下りを繰り返しながら旧集落や林道を経ること1時間半ほどで、ようやく昼食休憩の「高山竹林園」に辿り着きました。
「高山竹林園」は、国定公園として名高い生駒山系を背景にして、しなやかな竹林に囲まれた美しい山里である「高山の里」に位置しています。
ここは茶道具や毛糸編み針をはじめとする竹製品の生みの里としても知られ、資料館ではそれらの展示を見ることができるほか、休日には日本庭園を眺めながら、茶室でお抹茶や菓子をいただくこともできます。
また、「高山竹林園」の広場はもとより「高山の里」の田畑などで、竹製品の産地らしい竹の天日干しの風景※を眺めることができます。
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茶道具の茶筅(ちゃせん)の材料になる竹は、細く加工しやすい淡竹(はちく)と呼ばれています。これは約2メートルに切った竹をゆでて油抜きした後、50本ずつ束ねて天日干しした後、倉庫で数年寝かせてようやく茶筅として加工されることになります。 |

久しぶりに身体を動かし、穏やかな春先の陽光を受けてかすかにそよぐ竹の葉音を耳にしていると、心地よい眠りに誘われそうな一時でした。この地域の竹林は、いずれもほっそりとして優美な印象が強いことで、独特な景観をつくりだしているように見受けられました。
また、良質の竹が育つ茶道具の産地であるということは、すなわち近くに茶の湯を嗜む生活文化があり、良質の水が流れる地域であるという証拠にもなるわけで、今回の散策の最後に訪れることになっている酒蔵に対する期待感も高まってくるのでした。

昼食後は再び列をなして歩き続け、途中で奈良時代に創建された行基ゆかりの寺院である「長弓寺」に参拝し、ゴール地点の酒蔵「中本酒造」をめざしました。
再びいい汗をかき、「中本酒造」に辿り着いた後は、お楽しみ抽選会の結果を確認し、蔵の皆さんが用意して下さった温かな甘酒に舌鼓を打ちました。
この甘酒は、今回特別に銘酒「山鶴」の大吟醸酒粕をふんだんに使ってつくっていただいたもので、香りのよい米の粒がたくさん含まれており、まさに身体に染み渡るようなおいしさでした。
その後、蔵の見学や試飲会を楽しみ、帰りには今回のハイキングのために蔵がオリジナルでつくられたという600本限定の「山鶴」記念ボトルと大吟醸酒粕をお土産に購入して、車中何度も包みの中から漂うフルーティな香りを楽しみながら帰途につきました。
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中本酒造店「山鶴」は、創業270年の歴史を持つ奈良の造り酒屋です。ここで製造される酒の100%が純米酒であり、蔵では「一白・二蔵・三杜氏」をモットーに、全ての酒を吟醸規格で醸しているとのことです。
ちなみに吟醸規格とは、「精米歩合が60%以下(米の外側を40%以上削る)」「醸造アルコールの添加量が白米重量の10%以下」「醪(もろみ)の段階で低温で長期(だいたい25日以上)経過をとる造り方」などをいい、純米酒とは原料に米と米麹と水だけを使ってつくられる酒のことです。こうしてつくられた酒の最大の特徴は、フルーティな香りにあります。
中本酒造では、酒蔵に併設された直売処「与左衛門」でじっくり好みの酒を選ぶことができます。
高山の里を巡った後に酒造を訪ねれば、「山鶴」を口にする度に優美な竹林の風景を思い浮かべることができるはずです。
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