
例年よりも少し温かいとはいえ、朝の冷え込みを感じる午前8時。焼香のけむりが立ちのぼる境内に、参詣者が早くも訪れていました。約1400年前、聖徳太子によって建立された大安寺は、日本最古の寺の一つとして知られます。奈良時代には飛鳥から移築され、僧侶887人を擁する大伽藍を誇ったとも。その大安寺で開かれる、毎年恒例の新春行事が「光仁会 がん封じ笹酒祭り」です。
光仁会は奈良朝第七代、光仁天皇の一周忌の法要が営まれたことにはじまります。光仁天皇は諸王の頃から、大安寺を参詣するたび、境内の竹林で青竹を伐り、そこにお酒を注いでお召しになったとか。中国の故事にちなんだ、風流なお酒の飲み方が効を奏したのか、当時としては驚異的な62歳という高齢で帝位につき、73歳まで在位したといいます。光仁天皇の長寿健康にあやかって、悪病難病を封じ、無病息災を祈願しようと、がん封じの祈祷と笹酒の接待が行われるようになったのです。

本堂ではがん封じの祈祷が行われ、錫状をもった僧侶が参詣者一人ひとりの身体に加持を授けていきました。祈祷を受けたあと、お札やお守りを授かり笹酒の接待へ。長さ1メートル程の竹筒に酒を注ぎ、焚き火で温める光景は、新春の風物詩そのもの。風情あふれる笹酒を、艶やかな着物姿の笹娘がふるまってくれるとあって、毎年楽しみにしている人も多いようです。自然の竹を使った盃に、トクトクとお酒を注がれる瞬間は、まさに至福のひととき。竹の香りがお酒の風味を上品に引き立て、祭りという特別な雰囲気でしか味わえない旨さを醸していました。

また、今年から、車で訪れる人やお酒が苦手な人のために、大峰山の湧き水を清めた笹水もふるまわれました。ほのかな竹の香りをふくんだ笹水は、身体の中をさらさらと清めてくれそうな、すっきりとした味わい。
ふだんお酒をおいしく飲めるのは、健康であってこそ。光仁天皇のように長寿をまっとうする秘訣は、風流なお酒の飲み方にあるかもしれませんネ。
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炭火が赤々といこる囲炉裏の情景。お酒好きの人ならきっと、そこに川魚と竹酒があれば最高!と思うでしょう。青竹の筒に入れた酒を囲炉裏やたき火の灰に刺し、燗をつけたものをかっぽ酒といいます。青竹の香りが移った酒は独特の風味をもち、昔は「2級酒が特級酒になる」といわれたほど、お酒の味を深める飲み方でした。
もともと、かっぽ酒は山里の生活から生まれたもの。仕事の合間に手近な青竹を切り、節を抜いたものに清水を入れて焚き火をくべ、茶を沸かして飲んだことに始まります。注ぐときに、カポカポと心地よい音を立てることから、かっぽ酒と呼ばれるようになったとか。茶や酒を温めるだけでなく、簡単な煮炊きにも使われていたため、割烹(かっぽう)の語源説もささやかれています。
青竹から出る竹の油がお酒に溶け込み、何ともいえない旨さを醸すかっぽ酒。野趣あふれるお酒をじっくりと味わいたいものです。
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| 本堂では朝から夕方まで祈祷が続いた。 |
「長寿笹酒」は正月三が日と笹酒祭りの日のみ授かれる。 |
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